この遊びは、身に染みる。

僕の名前はあかぎ。流山に住む中学生だ。
僕には、さくらという一人の幼馴染がいて、僕たちは小さい頃から、色々な遊びをした。中でも一番お気に入りの遊びが、数少ないお小遣いを握りしめて流鉄に乗って別の街へと宝探しに行くこと。
「お！ おチビちゃんたち！ 今日はどこまで宝探し行くんだ⁇」
「「幸せの谷！！」」
「幸谷ね！気をつけて行くんだぞ！」
「駅員さん、また流鉄の話聞かせて！」
「お、いいぞ！ 昔流鉄はお客さんだけでなく、流山名産の味醂、そのほか
に醤油なども運んでいてな…」
いつしか僕たちは、駅員のおじさんとすっかり仲良しになっていた。

でもある出来事がきっかけですべてが変わってしまった。
それは学校からの帰り道、さくらに最近親に買ってもらった流鉄のマスコット「りゅうのしん」のキーホルダーを見せていたら、さくらがうっかり落として、壊してしまった。 お気に入りのキーホルダーを壊された僕は思わず怒ってしまい、「絶交だ！」と言い放ち、さくらを置いて、走って帰ってしまった。

それ以来さくらとは気まずくなってしまった。駅のホームでばったり会っても思わずお互い目をそらしてしまう様になってしまった。そんな月日が過ぎてゆき、夏休みが明けて久しぶりに流鉄に乗ると、いつも登下校が一緒だったさくらの姿が見えなかった。駅員のおじさんに聞いてみたら、
「ああ、さくらちゃんね。夏休みの間に家族と東京の方に引っ越したんだ。あかぎくん、宝探しの仲間がいなくなっちゃって寂しいね。」と言った。

ギュッと胸の奥が痛くなった。どうしよう、喧嘩したまま別れちゃった。本当は大事な友達なのに。
「大丈夫、さくらちゃんならいつか絶対戻ってくる！」
泣き出しそうになっていた僕を駅員のおじさんが励ましてくれた。

それからまたしばらく時間が経ち、いつものように学校帰りに流山駅で電車を待っていると、
「お、あかぎくん！どうだ、元気か？」と声をかけられた。
いたずらっぼい表情で笑っている駅員のおじさんだった。
「どうだ、久しぶりに宝探しをしてみないかい？」おじさんは聞いた。
「いやだよ、一人でする宝探しは楽しくない。」と言って、僕は電車に乗ろうとした。
「そう？君の宝探しの相棒からの挑戦状だよ？」にやりと笑う駅員さんの片手には一枚の手紙を持っていた。
その言葉に僕はくるっと振り向き、僕は手紙を受け取った。封筒には確かにさくらの字で「あかぎくんへ」と書いてあった。

手紙には「宝探しが好きな君に、特別な宝探しを用意した。期限は6日間。よーいスタート！」と書かれていた。

読み終えたと同時に発車のベルが鳴り響く。

「さあ、そろそろ電車が出るぞ！久々の宝探し、楽しんで来い！」