ストーリー
私のおじいちゃんは、熱海で花火職人をしている。
小さいころからおじいちゃんの花火が大好きで、
家に遊びに行ったときはいつも
「私も花火職人になる!」と言っていた。
そしたらおじいちゃんは優しそうに微笑んで、
決まって「そりゃあ楽しみだ」と言ってくれたんだ。
学生になると、頻繁に遊びに行くことはなくなったけれど、
「花火職人になる」という夢だけは変わらないままだった。
そして大学三年の夏、
久しぶりにおじいちゃんの家に行くことになった。
旅支度をしながら電話越しに
「花火職人のいろは、また教えてね」と言うと、
「おまえもじきに、就職だろ。
もっとほかに必要なことを学びなさい」と返ってきた。
「どうして!? 私は花火職人になるって決めているのに!」
しばらくの沈黙の後、おじいちゃんはこう言い放った。「まだそんな夢を追っているのか。
おまえは花火職人を目指さないほうが良い。」どうしておじいちゃんが私を花火職人になることから
遠ざけようとしているのか、
なぜ急にそんなことを言い出したのかは、わからない。
でもそう言われて、「はいそうですか」
と簡単に引き下がることができないぐらい、
おじいちゃんの花火は私の心を掴んで離さなかった。
私は、その言葉の真意を知るため、熱海へと向かった。